大坂屋家具店の歴史

大坂屋家具店のはじまり

大坂屋家具店の創業は1892年、明治25年になります。令和元年となる2019年で127年目を迎えました。軽井沢彫りの元祖として初代川崎巳次郎が外国人宣教師や外交官の要望に応え、外国人向けの彫刻を施した家具の製作を始めました。軽井沢彫りの始まりを記した書物『かるいさわ 郷の華』によると川崎巳次郎が日光の店の暖簾分けとして「権現商会支店」という看板で明治25年に日光や鎌倉から商品を仕入れ、販売を行っていました。そして明治41年に2軒の外国人向けの彫刻を施した家具店が出現したと記されています。一軒は川崎巳次郎でもう1軒は清水兼吉。この頃には軽井沢の地で製作した作品が出来たと言われています。創業当時の品として三井三郎助別荘(明治33年)の家具が大坂屋家具店に寄贈されており、三井三郎助の別荘家具は初代川崎巳次郎が手掛けたものと言われています。

大正2年の旧軽井沢銀座

「TABLES MADE BY M.KAWASAKI」の看板

大坂屋家具店の変遷

初代川崎巳次郎の創業当時は「権現商会支店」そしてその後「川崎商店」、2代目土屋寅五郎が婿となって家業を受け継ぐことになり、その時に徳川時代から続いている屋号『大阪屋』(以前は旅籠であった)に改め、現在の「大坂屋家具店」と変遷していきました。

昭和14年 2代目土屋寅五郎(中央)と後の3代目土屋周一郎(左から2番目)

2代目土屋寅五郎(左)と彫師、小林喜久雄(左)出征時

美智子さまとの思い出

1977年(昭和52年)の夏、美智子さまと紀宮さまが大坂屋家具店の工房に見学にお越し頂きました。紀宮様の伝統工芸の学習の一環として軽井沢彫りの制作過程をご覧頂きました。その際に美智子様より「お針箱はできますか?」とご依頼を頂戴し、美智子様の描かれたスケッチを元にオーダーメイドのお品を製作させて頂きました。その時に紀宮様がキーホルダーが欲しいとのことで現在の女将が一緒にお店にお連れしたそうです。その写真には大坂屋家具店の現在の女将がいないという微笑ましいエピソードもございます。

美智子様と紀宮様(中央)と3代目土屋周一郎夫婦(両脇)

美智子様と大坂屋家具店の社員

今日まで

明治・大正・昭和・平成そして令和と120余年の間に製造された軽井沢彫家具が何代にも渡って大切に使い続けられています。時代の流れと共に、別荘用の家具としてだけではなく、日常の生活でもお使いいただけるよう、デザイン・仕様・彫刻装飾・彩色などに工夫を重ねてまいりました。そして2014年には長野県百年企業の「信州の老舗」に受賞致しました。現在4代目の土屋強平の「伝統を守りながら、新しい技を生み出す努力を決して怠らない」という考えのもと、次の100年を目指してまいります。

2000年旧工場にて

2007年新工場完成の地鎮祭